048765 ランダム
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PATON  GIRL!

PATON GIRL!

思い出のキス

4人はサファリの先にあるレゲエバーに行った。奥にバイクとビリヤードの台が置いてある。
店先にあるカウンターにダムが座っておーちゃんは飾ってあるバイクにまたがった。

「ここ、座って」

ダムが自分の横のイスを引いてくれた。あたしはダムと隣どおしに座ってダムをこっそり見てた。

お姉ちゃんとおーちゃんはバイクのところで何かを話してたから、ダムと二人だった。

「僕がいないから、違う人と遊んだでしょ?僕知ってるよ。髪の長い若いビーチボーイ」

!?

それって、、、ジャックのことだよね、、、何で知ってるの?

「そんなことしてないよ、、、」そういったけどダムはにやっと笑った。

「この前バーに行ったでしょ?おーちゃんたちと。」

、、、おーちゃんだ。バラしてんじゃねえよ!

「なんていう名前なの?」

仕方がない。知ってるんだろう。それでもあたしの口から言わせたいんだろう。
「、、、ジャック、、、」

「だよね?僕知ってるよ。仲いいよ。」

は??

ジャックとダムが?ありえない!!

「あなた、今生理でしょう?彼女が生理で泊まれなかったって言ったもの」

あー、パニックです、、、

「僕と彼、よく話すよ。僕とちーの昔のことも彼知ってるよ」

あたしは何も言葉が出てこなかった。ジャックとダムがつながってる?ジャックはあたしとダムのことも知ってる?まさか、そんな。

ダムはまだ続ける。

「僕たち、今恋人とはいえないでしょう?よくわからない関係。だから仕方がない」

てことは、、、あたしたちは元彼、モトカノってこと?

あたしはダムとちゃんと付き合ってたって思ったことは一度もなかった。
もちろんプーケットにくれば、必ずダムと一緒にいたけど、それ以外は何もない。あたしがいつ来るのかも、ダムはいつも知らない。

でも、ジャックは違った。メールと電話でいつもつながってた。だから、あたしはジャックを彼氏だと思えた。

あたしは、じゃあ、ちゃんとしようよ、ちゃんと恋人になろうよって言いたかった。でも、出た言葉は

「ダムは、今恋人いるの?」だった。

「いないよって言っても信じないでしょう?だから、いるよ」

、、、あたしの言葉はのど元で消えた。なにもいえなかった。ショックだった。
あたしの気持ちを察したのか、だむは付け加えた。
「恋人とはいえない。向こうが来たときに会ったりはするけど」

、、、つまり、あたしと同じ立場の子がいるってこと。聞かなかったけど、まず間違いなく日本人だろう。

あたしは動揺を隠そうと結構必死だった。だってあたしはダムを責めることはできない。
5年もプーケットに来ないことがあった。その間にダムは新しい女の子を見つけたし、津波が来た。

ダムとおーちゃんがビリヤードを始めた。始めてあった頃もよくボーイズたちがビリヤードをするのをみていた。あの頃よりもダムは体つきががっちりして、男らしくなった。

ゲームの合間にもダムはあたしの横に来てタバコを吸いながらあたしの頭をなでた。
会話の内容は憶えてない位取るに足らないものだったけど、あたしの頭をさわってはニコニコと笑ってた。

「ダム?あさって、サーフィンの大会でしょ?その日、あたしの誕生日なんだよ」
「あ、そうなの?」

あたしは誕生日にはダムと一緒にいたかった。もう今はダムはあたしのボーイフレンドとは言えない。あたしにはジャックと言う彼氏がいる。でも、ダムと一緒にいたかった。

お店は2時で閉まってしまった。
「次、僕の家に行こう」

車に乗ってダムの家に向かう。

「ダム、引っ越した?」
大レゲエが言ったことを思い出してそう聞いた。

「引っ越してないよ。僕の家、覚えてないの?」

着いたのはまさしく前回来たダムの家。しかも、、、

入ってすぐのベッドには誰かが寝ていた。その奥の部屋、ダムの部屋のベッドにも誰かが横になって寝ていた。

その頭は、、、レゲエだ。大レゲエが寝てた。


ウソツキめ!!

ビールを飲んでダムと隣どおしに座った。さっき聞いた話は確かにショックだった。でも、今こうしてダムと一緒にいる。それだけでなんでこんなに幸せなんだろう。

お姉ちゃんがビデオをまわしながらうちらを撮った。

「はい~、ちーちゃんとダム~。楽しい?」

そういったお姉ちゃんに、あたしは答えた。

「ハッピー」

隣にいたダムが言った。
「ほんと~?よかったね~」

その画は今見ても幸せそのもの。ダムがあたしを覗き込んで笑いながら
「よかったね~」
って言っている。

おねえちゃんとおーちゃんはベッドに横になっていた。いくらダブルサイズの大きなベッドとはいえ、大人3人(奥にレゲエが寝てるまんまだったので)
寝たらもう隙間はない。あたしとダムはしばらくはタイルの床に座り込んでいたけど、そのうちに入ってすぐのベッドに寝ていたボーイを追い出して(!!??)ダムがあたしの手を引っ張ってそのベッドに倒れこんだ。

部屋はいつの間にか暗かった。あたしとダムは少しずつ距離を狭めて、そっとキスをした。泣きたくなった。7年もかけてすきだってことに気付いた人とのキス。

国籍も、生活の違いも、何も気にして入られなかった。もちろん、ジャックのことも。

うちらは夢中でくっついて、何度もキスをした。あたしはなんとなくこれが最後のキスかもしれないと思った。どんなに好きでも、結ばれない。そんな予感がしてた。

ダムと抱き合っていつの間にか寝ていたみたいだ。

「おーちゃんが送ってくれるから」

ダムがあたしの頭をまたなでて起こした。お姉ちゃんもおーちゃんももう部屋にはいない。立ち上がった。

「またあとでね」

ダムがそういった。バイバイといって車に乗った。

ホテルに着いたのはもう4時を過ぎていたと思う。お姉ちゃんはダムが言った恋人の話は気にすることはないよ、彼女じゃなくて、来たときに相手にするだけだから。
そういってくれたけど、あたしはその夜のダムとの思い出に浸り、いつの間にかぐっすりと寝てしまった。

ダム君と、唯一会えた、大切な夜が明けてしまった。



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